ブルームバーグで「リフレ派」とされる2人が、日銀の政策委員に選ばれたという報道を見た。首相は高市氏。市場では円安・株高・長期金利上昇といった反応も出て、「利上げにブレーキがかかるのでは」という見方が広がったようだ。
ただ、日銀の政策は“空気”ではなく、制度としてはシンプルだ。金融政策を決める政策委員会は9人(総裁1・副総裁2・審議委員6)で、最終的には多数決で決まる。委員は内閣が任命し、国会同意が必要――ここはルールで動いている。
だから結論から言えば、2人だけで金利の流れを止めることはできない。5票を取れなければ政策は動かない。けれど、2人が“利上げ慎重”の色を帯びているなら、意味がゼロでもない。会合の中で「追加利上げの条件」を厳しく見たり、判断を急がない方向へ議論を引き寄せたりする“重し”にはなる。
そして、ここで気になるのが植田総裁の存在感だ。制度上は1票でも、総裁は議論を整理し、世の中に説明し、市場の期待を形づくる。実際、植田総裁が高市首相との面会で「特段の要請はなかった」と述べたという報道もあり、政治との距離感を意識しつつ、主導権は日銀側にあるという印象も残る。
では、金利は結局どこで決まるのか。私の感覚では、物価は上がり、企業の業績も悪くないように見える。なのに、賃金が追いついている実感は薄く、生活が苦しい状態が続いている。ここが一番の引っかかりだ。物価だけが先に走っている局面で金利まで上がっていけば、住宅ローンや借入の負担感はじわじわ増える。だからこそ、日銀には「上げるために上げる」ではなく、賃金と景気の足腰を見ながら慎重に判断してほしいと思う。
2人の“リフレ派”が委員に入ったことは、利上げを止める「決定打」ではない。けれど、利上げが加速しそうなときに、拙速にならないようブレーキを踏む声が増える――そのくらいの意味はあるのかもしれない。結局のところ、9人の顔ぶれ以上に強いのは、街の値札と、給料日後の通帳残高だ。
