米政府が恐れるAIが登場した——27年間誰も気づかなかった脆弱性を、数分で見つけ出した話

先日、こんな見出しを目にした。

「アンソロピック最新AI、米政府も恐れる威力」

正直、最初は流しかけた。
最近こういう見出し、多すぎるから。

でも読み始めたら、途中で手が止まった。

目次

封印されたAI

2026年4月、AI企業アンソロピックが新しいモデル「Claude Mythos Preview」を発表した。

ただし、誰でも使えるわけじゃない。
一般公開はなし。
選ばれた組織にだけ、提供される。

理由はシンプルで、「危険すぎるから」だ。

何が危険なのか。

このAIは、コンピューターに潜む「ゼロデイ脆弱性」を自力で見つけられる。

ゼロデイとは、まだ誰にも知られていないセキュリティの穴のことだ。
パッチも対策もない。
見つけた人間が、一方的に攻撃できる。

で、内部テストで何が起きたかというと——

OpenBSDというOSの中に潜んでいた27年前からある脆弱性を、Mythosが自力で発見した。

人間の専門家も、自動化ツールも、何十年もかけて見逃してきたやつを。

しかもそのまま、攻撃するためのコードまで自分で書いてしまった。

「Fortune 100企業を壊滅させられる」

米政府高官は、こう証言したという。

「悪意ある者の手に渡れば、Fortune 100企業を壊滅させ、インターネットを麻痺させ、国防システムに侵入できる」

さすがに大げさでは、と思う気持ちもある。

でも、27年間誰も気づかなかった穴を見つけてしまったのは、本当の話だ。

怖いけど、欲しい

ここが一番おもしろいな、と思ったのだが——

米政府は怖がりながら、手に入れようとしている。

ホワイトハウスの首席補佐官がアンソロピックのCEOと直接面会して、政府機関がMythosを使えるよう交渉中だという。

でも政府内の別の声は「アンソロピックが脅威を大げさに言っているだけだ」とも。

怖いと言いながら欲しがる。
欲しいけど怖いとも言う。

なんか、すごく人間らしいなと思った。
強い武器は、相手より先に持っておきたい。
国家も、結局そういうものだ。

「守るため」という建前

アンソロピックはProject Glasswingという連合組織を立ち上げた。

Apple・Google・Microsoft・NVIDIAなど12社が参加して、Mythosを使ってソフトウェアの脆弱性を「攻撃ではなく防御のために」修正していく、という取り組みだ。

英国のAIセキュリティ機関も「弱いセキュリティのシステムを攻略できる能力がある」と評価した。

守るためのAIが、攻撃にも使える。

この両義性、どこかで聞いたことがある気がする。
核だって、最初は「平和利用」から始まった。

「すごい」で流す前に

AIがすごいというニュースには、もう慣れた。
文章を書く、絵を描く、コードを組む。

でも今回のは、少し毛色が違う気がした。

27年間、世界中の専門家が見つけられなかった穴を、AIが見つけた。

サイバーセキュリティって、ずっと「人対人」の世界だったと思う。
ハッカーとエンジニアが、知識と経験をじりじりとぶつけ合う、頭脳戦。

そこに、眠らない、疲れない、しかも異様に速い存在が入ってきた。

アンソロピックは「危険だから公開しない」と言う。
でも技術は、いつか広がる。
Mythosが使えなくても、同じようなものを誰かが作る日は来る。

今私たちが見ているのは、その「いつか」が少し近づいた景色なのかもしれない。


怖い話を書いてしまったけれど、私は別に悲観しているわけじゃない。

ただ「すごいね」で流す前に、ちょっとだけ立ち止まってみてもいいかな、と思っている。

27年前の穴が、今日見つかった。
そういう時代になった。

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