5月の給与明細を開いて、見慣れない行に気づいた人がいるかもしれない。
「子ども・子育て支援金」。
今年の4月から始まった新しい社会保険料だ。子どもがいるかどうかにかかわらず、公的医療保険に加入しているすべての人が対象になる。多くの会社では5月支給の給与から天引きが始まっているはずだ。
実際、いくら引かれているのか
負担額は収入によって異なる。
会社員の場合、個人の負担率は標準報酬月額の0.115%。標準報酬月額30万円なら月345円、20万円なら月230円ほどだ。会社が同額を負担するので、合計では倍になるが、自分の手取りから引かれる分はその半分になる。
「思ったより少ない」と感じる人もいれば、「子どもがいないのになぜ」と感じる人もいるだろう。その気持ちは、どちらもよくわかる。
「自分には関係ないのに」という声
制度が始まってから、ネットにはこんな声が並んでいる。
「子どもを産まない選択をしているのに、なぜ払うのか」「また天引きが増えた」「少子化対策は賛成だが、方法が納得いかない」——。
気持ちはわかる。手取りはただでさえ増えない。物価は上がる。そこへ新しい天引きが加わる。「また引かれた」と思いたくなるのは自然なことだ。
そして、子どもを持たない選択をしている人が、子どもが嫌いなわけではないことも忘れてはいけない。仕事の忙しさ、住まいの事情、経済的な不安、パートナーとの状況——それぞれの現実の中で、やむを得ずそう判断している人が多いはずだ。「産みたくても産めない」という声は、今も社会のあちこちにある。その人たちに「払って当然」とは、とても言えない。
でも、少し立ち止まって考えてみたいことがある。
子育ては、親だけでできるものだろうか
子育ては、両親だけの問題ではないと、私は思っている。
自分自身の話をすると、子どもを育てていたころは、目の前のことでいっぱいだった。給与は低く、時間の余裕もなく、「もっとしてやれたのに」という思いが今でも残っている。子育てはお金だけではない。時間がいる。体力がいる。そして、誰かのサポートがいる。
かつて、地域には「大丈夫?」と自然に声をかけてくれるご年配の方がいた。子どもが泣いていれば隣から顔を出し、親が疲れていれば少し手を貸してくれる人が、日常の中にいた。
今はその風景がずいぶん薄くなった。代わりに目に入るのは、SNSへの心ない投稿だったりする。誰かを悪者に仕立て上げて、自分のバズりのために使う——そんな光景が、かつて親切な声かけのあった場所を埋めているように感じることがある。
だからこそ、制度がその代わりを担おうとしているとも言える。
集めたお金は、何に使われるのか
子ども・子育て支援金の使い道は、具体的に決まっている。
- 児童手当の拡充(高校生まで延長、第3子以降は月3万円に)
- 妊婦への支援給付の新設
- 「こども誰でも通園制度」の整備(保育所に入れない子も利用できる)
- 育休中の給付拡充(手取りの80%相当に)
- 育児中の時短勤務への給付(育児時短就業給付)
子どもを産んだ人だけが得をする仕組みではなく、「これから子どもを持ちたいと思っている人」「今まさに育てている人」を社会全体で支える財源として使われる。
月345円が、安く感じるのは私だけだろうか
子どもが増えることに、私は賛成だ。
少子化が続けば、社会の支え手が減る。年金を支える現役世代が少なくなれば、給付額が下がるか保険料が上がるかのどちらかだ。医療費の負担も増す。地方では若者が都市へ移り、学校が閉まり、商店が消え、子育てどころか暮らすこと自体が難しい地域が増えていく。
少子化は、子どもを持つ家庭だけの問題ではない。今の自分の生活に、じわじわと影響が出てくる話だ。子どもが増えることは、回り回って、自分自身の将来にもつながっている。
月345円——コーヒー1杯にもならない金額が、子育て世帯の誰かの「ちょっと楽になった」につながるなら。あのころの自分のような親が、少し肩の力を抜けるなら。そう思うと、高くは感じない。
「自分には関係ない」と感じる気持ちもわかる。でも、子育ては社会全体で育てていくものだという視点で見ると、月345円の意味が少し変わって見えないだろうか。
あなたは、どう感じましたか。
まとめ
- 子ども・子育て支援金が2026年4月から開始、5月の給与から天引きが始まった
- 個人負担額は標準報酬月額30万円で月345円程度(年収・加入保険によって異なる)
- 子どもの有無にかかわらず、公的医療保険加入者全員が対象
- 使途は児童手当拡充・無償保育拡大・育休給付拡充など具体的に決まっている
- 「自分には関係ない」か「社会全体で育てる」か——どう受け取るかは、あなた次第
