4月になった。
給与明細を開いた人の中に、こんな項目を見つけた人がいるかもしれない。
「子ども・子育て支援金」
聞いたことはある。でも、何のためにいくら引かれるのか、よくわからない——そんな人のために、この記事では制度の中身と、今後の負担額の変化、そして「独身税」と呼ばれる理由まで、まとめて整理する。
なぜ今、こんな制度ができたのか
少子化が止まらない。
2023年の出生数は72万人台まで落ち込み、政府はある数字に危機感を持っている。2030年代に入ると、結婚や出産を考える年齢の人口が急激に減少するという予測だ。
「今手を打たなければ、手遅れになる」
そう判断した政府が2024年に成立させたのが「こども未来戦略」であり、その財源として設計されたのがこの支援金制度だ。目標は2028年度までに年間1兆円の財源を確保すること。その財源を、子育て支援の充実に充てる。
誰がいくら払うのか
払うのは、子どもがいるかどうかに関係なく、公的医療保険に加入しているほぼ全員だ。
会社員は健康保険料と一緒に給与から天引きされ、自営業・フリーランスは国民健康保険と合わせて納付する。
負担額は収入によって異なるが、2026年度(5月支払いの給与から)の目安はこうなる。
| 年収 | 月の個人負担(2026年度) |
|---|---|
| 200万円 | 約192円 |
| 400万円 | 約384円 |
| 600万円 | 約575円 |
| 800万円 | 約767円 |
| 1,000万円 | 約959円 |
全制度の平均でみると、月250円が2026年度の負担だ。「缶コーヒー1本分」とよく例えられる。
ただし、これで終わりではない
ここが重要なポイントだ。支援金の料率は段階的に引き上げられる。
| 年度 | 全制度平均の月額負担 |
|---|---|
| 2026年度 | 約250円 |
| 2027年度 | 約350円 |
| 2028年度 | 約450円 |
2028年度には料率が0.4%程度まで上がる見込みで、その頃には年収600万円の人なら月約1,000円前後の負担になる。
「今は少額だから」と油断していると、気づけば毎月の天引きが積み重なっている——そういう仕組みだ。
集めたお金は何に使われるのか
支援金の使い道は法律で定められており、以下の6つの施策に限定されている。
① 児童手当の拡充(2024年10月〜)
所得制限が完全撤廃され、支給が高校生年代まで延長。第3子以降は月3万円に増額。これはすでに始まっている。
② 妊婦への支援給付(2025年4月〜)
妊娠届出時に5万円、妊娠後期にさらに5万円。単胎なら合計10万円の支援が受けられる。
③ こども誰でも通園制度(2026年4月〜)
働いていなくても、時間単位で保育所を利用できる制度。「専業主婦は使えない」という不公平感を解消するための仕組みだ。
④ 出生後休業支援給付(2025年4月〜)
男女ともに育休を取得した場合、最大28日間は手取りが実質10割になるよう給付が厚くなった。
⑤ 育児時短就業給付(2025年4月〜)
2歳未満の子どもを育てながら時短勤務をしている人に、賃金の10%相当を支給。
⑥ 自営業者の育休中の年金免除(2026年10月〜)
フリーランスや自営業者が育休中に国民年金保険料を免除される制度。これまで会社員にしかなかった仕組みが広がる。
政府の試算では、子ども1人が生まれてから18年間で約146万円分の給付拡充が受けられるという。
なぜ「独身税」と呼ばれるのか
制度の説明を聞いて、こう思う人がいる。
「子どもを持っていない私が、なぜ払わなければならないのか」
あるアンケートでは、子どもを持たない未婚者の約8割が「納得できない」と回答した。「独身税」という言葉は、そういった不満から生まれたものだ。
批判の核心は公平感だ。直接の恩恵を受けない層が、同額の負担を強いられる。保険料という形をとっているが、実質的には子育て世帯への所得移転ではないかという疑問だ。
政府の説明は「社会全体で子育てを支えるという考え方だ」というものだが、こども家庭庁の幹部自身が「一般の人には分かりづらく、説明が難しい」と認めている。
投資と見るか、負担と見るか
ただ、少し視点を変えると、こういう見方もできる。
少子化が進めば、労働力が減り、経済が縮み、年金や医療の支え手が少なくなる。その結果として困るのは、子どもを持たない人も含めた社会全員だ。
「子育ては個人の問題ではなく、社会インフラへの投資だ」という論理は、完全に間違っているわけではない。
月250円から始まって450円へ——その金額が、日本の出生数にどんな影響を与えるのか。制度が動き始めたばかりの今、答えはまだ出ていない。
給与明細の新しい行を見ながら、そんなことを考えてみるのも悪くない。
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