先日、「ホンダが電気自動車(EV)で1兆円を超える赤字を出した」という話を書きました。
トヨタやホンダといえば、日本を代表する自動車メーカーです。そのホンダが、EVでこれほど苦戦している。記事を書きながら、ふと疑問がわきました。「そもそも、EVって本当に私たちの暮らしに向いているんだろうか?」と。
調べてみると、車の未来には「EV」「水素」「ハイブリッド」という3つの道があって、いま勝者がはっきりしてきた——という、なかなか面白い話でした。今日はその整理です。
車には「3つの道」があった
ガソリン車に代わる「次の車」として、長いあいだ3つの候補が競ってきました。
- EV(電気自動車)……電気だけで走る。排気ガスゼロ
- 水素(燃料電池車)……水素で発電して走る。これも排気ガスゼロ
- ハイブリッド……ガソリンと電気の「いいとこ取り」
少し前までは「これからはEVの時代だ」と世界中が言っていました。ところが今、ふたを開けてみると、結果はずいぶん違うものになっています。順番に見ていきましょう。
EVが、大衆に届かなかった理由
EVは「環境にやさしくて、電気代も安い」のが魅力です。実際、自宅で充電すれば、燃料代はガソリン車の3分の1から半分ほど。維持費も年間で数万円安くなります。
それなのに、なぜ広まりきらなかったのか。調べると、生活目線での「不便さ」が見えてきました。
- 充電に時間がかかる……急速充電でも1回30分が上限。しかも30分でフル充電にはならず、よくて8割、実際は半分しか入らないことも。ガソリンなら5分で満タンですから、その差は大きい
- 遠出が不安……高速道路のサービスエリアの充電器はまだ少なく、ゴールデンウィークなどは「充電待ちの行列」ができる。家族旅行には心もとない
- バッテリー交換が高い……寿命は8〜10年ほど。交換費用は車種により80万〜300万円。なんと車両価格の3〜5割を占めることも
- 売るとき安い……中古EVは「バッテリーがどれだけ劣化しているか分からない」と敬遠され、下取り価格が低くなりがち。日本経済新聞も「EVシフトに中古の壁」と報じています
つまりEVは、「毎日近所で乗る」には便利でも、「遠出する」「長く乗る」「いつか売る」と考えると、ハードルが高かったのです。
水素は「コスト」で脱落
もう一つの候補、水素の車(トヨタ「MIRAI」など)はどうだったでしょうか。
こちらは、もっとはっきりしていました。コストが高すぎたのです。
- 車両価格は710万円〜
- 燃料を入れる「水素ステーション」は、全国にたった160か所ほど(ガソリンスタンドは約2万8千か所、EV充電は約4万口)
- しかも水素ステーションは1か所つくるのに5〜6億円(ガソリンスタンドの約7倍)
走るための場所がほとんどなく、車も高い。これでは、普通の家庭が選ぶのは難しいですよね。水素は早々に「現実的な選択肢」から外れてしまいました。
ハイブリッドが勝った——でも、万能ではない
そして、最後に残ったのがハイブリッドでした。
EV一辺倒だった世界の流れは、いま大きく変わっています。ハイブリッドに力を入れてきたトヨタは、純利益3兆円超と絶好調。あの高級車メーカーのメルセデス・ベンツも「2030年までに全部EVにする」という目標を取り下げ、各社が「いろんな種類の車を作る」方針に戻っています。
ホンダの赤字も、日産の苦境も、見方を変えれば「EVに賭けすぎた反動」だったわけです。
ただし——ここが大事なのですが、ハイブリッドも万能ではありません。
- 実は、普通のハイブリッド車は購入時の補助金(CEV補助金)の対象外です(もらえるのは税金の軽減くらい)
- だから、ガソリン車より高い車両価格を、燃費の良さだけで取り戻す必要があります
- その「元を取る」までには、年1.5万km以上走って、長く乗ることが条件。車種によっては約11万km=年1万kmなら11年も乗らないと元が取れない計算になります
「ハイブリッドは経済的」というイメージがありますが、得をするのも、なかなか一苦労なのです。
で、私たちは、今どれを選べばいい?
ここまで調べて、面白い逆説にたどり着きました。
「たくさん乗らない人なら、実は普通のガソリン車が一番お得かもしれない」
整理すると、こうなります。
- あまり乗らない人……普通のガソリン車で十分。高い車を買うほうがかえって損
- たくさん走る・長く乗る人……ハイブリッドが活きる
- 自宅で充電できて、近距離中心の人……EVもアリ
結局、「どれが正解」という唯一の答えはなくて、自分の乗り方しだいなんですね。ニュースの「EVの時代」「ハイブリッド復活」という言葉に振り回されず、自分の生活に合うかどうかで選ぶ。それが一番だと思います。
おわりに——でも、いい時代だと思う
最後に、調べていて感じたことを。
自動車業界は今、たしかに厳しい時代です。でも、見方を変えると、ちょっとワクワクもします。
昭和の時代、メーカーは「いかに速いか(馬力)」を競っていました。スカイラインGT-Rのような名車が生まれた時代です。そして令和の今は、「いかに賢く走るか(燃費)」を競う時代になりました。
競争のステージは変わっても、技術者が知恵をしぼって鎬を削る姿は、昔も今も変わりません。ホンダや日産の苦しみも、言ってみれば「次の正解を探すための産みの苦しみ」。きっとこの先、私たちが驚くような車が出てくるはずです。
その日を楽しみにしながら、今は自分に合った一台を、じっくり選びたいものですね。
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