国債がお得って本当?——仕組みを知らずに買うのは危険かもしれない話

最近、「国債が買い時」「国債がお得」という言葉をよく耳にするようになった。

テレビのニュースで「長期金利が2.8%」と報じられ、証券会社はキャンペーンを打ち、SNSには「今こそ国債を買え」という投稿があふれている。

でも、ちょっと待ってほしい。

あなたは今、「どの国債」の話をしているか、ちゃんとわかって聞いているだろうか?

じつは「国債」と一口に言っても、個人が買えるものと、市場で売買されるものでは、まったく別の商品だ。この違いを知らずに動くのは、かなり危ない。

目次

① 「国債がお得」の正体を確認しよう

まず整理したいのは、ニュースで話題になっている「長期金利2.8%」と、証券会社のキャンペーンで勧められている「個人向け国債」は、別々の話だということだ。

ニュースで出てくる「2.8%」は、市場で取引される30年もの国債の利回りのこと。これは投資家や機関投資家が売買するもので、価格が毎日変動する。

証券会社が「お得」と言っている国債は、財務省が個人向けに発行している「個人向け国債」のこと。こちらは価格が変わらず、元本が保証されている全く別の商品だ。

同じ「国債」という言葉でも、中身がまったく違う。この混同が、多くの人を惑わせている。

② そもそも国債ってどういう仕組み?

国債とは、国がお金を借りるために発行する借用書のようなものだ。

基本の仕組みはシンプルだ。

  • 100万円を国に貸す
  • 毎年、決められた利息がもらえる
  • 満期になったら100万円が全額戻ってくる

新規発行で買えばこの通りで、難しいことは何もない。

ただし、市場で売買される国債には「価格の変動」がある。

満期前に売りたい場合、市場で売ることになる。このとき、金利が上がっていると、古い低い金利の国債は魅力が薄れるので、価格が下がる。

「金利が上がると、国債の価格は下がる」という逆の動きが起きる。

ニュースで話題の30年もの国債の利回り2.8%というのは、まさにこの現象だ。長期金利が上がりそうだと読んだ投資家が国債を売り、価格が下がることで利回りが上昇した。売りたい人が多い状態の結果として生まれた数字でもある。

お得に見える2.8%には、「それでも買う人が損をするかもしれない」という裏側がある。

③ 個人が窓口で買える「個人向け国債」3種類

個人が証券会社や銀行の窓口で買える「個人向け国債」には、3種類ある。

種類満期2026年5月金利特徴
変動10年型10年年1.67%金利が上がるたびに利息も増える。今の局面では有利
固定5年型5年年1.89%金利が固定。短期間で確実に運用したい人向け
固定3年型3年年1.57%3年で戻ってくる。すぐ使う可能性があるお金には不向き

いずれも元本は保証されており、市場価格の変動リスクはない。最低保証金利は年0.05%で、金利がゼロになることはない。

ただし、購入から1年間は解約できない。急にお金が必要になっても動かせないため、すぐ使う可能性があるお金を入れるのは危険だ。

④ 証券会社のキャンペーンに惑わされるな

今、証券会社が積極的に個人向け国債のキャンペーンを展開している。

  • みずほ証券:100万円以上の購入でキャッシュバック
  • 大和証券:1,000万円以上の購入でキャッシュバック

「今が絶好の買い時!」「金利1.67%でお得!」という宣伝文句が並ぶ。

でも、ここで冷静になってほしい。

証券会社はなぜキャンペーンを打つのか。それは、売れば売るほど販売奨励金が入るからだ。国債は購入手数料が無料でも、証券会社には国から販売奨励金が支払われる仕組みがある。「今が買い時」という雰囲気は、証券会社側の都合でも作られている。

キャンペーンに飛びつく前に、自分に問いかけてほしいことがある。

  • このお金、1年以上動かせなくて本当に大丈夫か?
  • 急に使いたくなる可能性はないか?
  • キャッシュバックの条件(最低購入額・申込期間)をちゃんと確認したか?
  • 「今すぐ買わなきゃ損」という気持ちは、誰かに作られていないか?

焦って大きな金額を動かす必要はまったくない。キャンペーンは毎月のように繰り返される。乗り遅れても、次がある。急かしてくる情報ほど、立ち止まって考えることが大事だ。

⑤ 住宅ローンが変動金利の人は今どうすべきか

「金利が上がる」と聞いて、変動金利で住宅ローンを組んでいる人は不安になるかもしれない。

でも、今すぐ慌てる必要はない。

変動金利は「日銀の政策金利」と連動している。日銀は現在、政策金利を0.75%に設定しており、次の利上げはトランプ関税による世界経済への影響を見極めながら慎重に検討中だ。急いで動く状況にはない。

一方、住宅ローンの固定金利はすでに上がっている。フラット35は2026年2月時点で2.2%を超えた。今から固定に切り替えようとすると、すでに高くなった金利を適用されてしまうリスクもある。

今できることは「備える」だ。

  • 毎月の支出を見直して、家計に余白を作る
  • 繰り上げ返済できる資金を少しずつ積み立てる
  • 固定への切り替えは、金利動向を見ながら焦らず判断する

情報に煽られて「今すぐ固定に変えなきゃ」と焦るより、落ち着いて生活の足場を固めることの方がはるかに大切だ。

⑥ 情報に踊らされないために

「国債が2.8%で話題」「今が買い時」「金利上昇で住宅ローンが危ない」——毎日のようにこういった情報が流れてくる。

でも、考えてみてほしい。

2.8%の国債は30年もの。途中で売れば損をするかもしれない。
証券会社のキャンペーンは、売り手側の都合でもある。
変動金利のローンは、日銀が動くまでまだ猶予がある。

「お得」「危ない」「今すぐ」——こういう言葉が並ぶとき、誰かの利益のために情報が作られている可能性を、頭の片隅に置いておくといい。

正しい判断のためにまず必要なのは、焦ることではなく、仕組みを知ることだ。

知った上で動くのと、知らずに動くのでは、10年後の結果がまるで変わってくる。

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この記事を書いた人

時事・経済・社会問題を「身近な視点」から読み解くライター。日常のちょっとした引っかかりを起点に、政治・経済・テクノロジーの動きを平易な言葉で伝えることをテーマにしている。よりみち世相録では、3分で読めるニュース解説を毎週更新中。

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