桜咲く春に、予算が間に合わなかった話——11年ぶりの暫定予算と高校無償化

今日、3月27日は「さくらの日」らしい。3と9で「さくら」の語呂合わせ、そして七十二候の「桜始開」と重なるこの日に、そんな記念日があったとは知らなかった。窓の外はまだ肌寒いが、暦の上では桜が咲き始めるころ。そして新年度まで、残り4日。

ところが今年の春は、国の予算がいつもどおりには「間に合わなかった」。

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11年ぶりの「つなぎ」予算

政府は今日、2026年度の暫定予算案を閣議決定した。4月1日から11日までの11日間、総額約8.6兆円。正式な予算が成立するまでのあいだ、公務員の給与・年金・社会保障の支払いを止めないための「つなぎ」の予算だ。このような暫定予算の編成は、2015年度以来、11年ぶりのことになる。

なぜこうなったか。今年1月、高市首相が通常国会の冒頭で衆院を解散・総選挙に踏み切ったため、予算審議に充てられる国会日程が大きく圧縮されてしまった。 衆院での審議時間は約59時間と、過去20年で最短となった。年度内成立という目標は、結局かなわなかった。

アメリカなら「政府閉鎖」になるところ

ここで思い出すのが、アメリカの「ガバメント・シャットダウン」だ。予算が議会で合意できないと、連邦政府機関が部分的に閉鎖され、公務員が一時無給になる。国立公園が閉まり、パスポートの更新が止まり、食品安全の検査官が自宅待機になる——そんな事態が、アメリカでは過去に何度も起きてきた。

日本の「暫定予算」はそれとは異なる仕組みだ。予算の空白を埋める暫定措置を、あらかじめ法制度として用意しておく。つまり「本予算が間に合わなかったとき」のための保険が、ちゃんと機能している。4日後に新年度が始まっても、役所は動き続け、年金は振り込まれ、学校の新学期は始まる。

高校無償化、予定どおりスタートへ

その「新学期」に絡んで、もうひとつ注目したいことがある。高校の授業料の話だ。

2026年度から、高校授業料の無償化制度が大きく変わる。所得制限が撤廃され、国公立・私立を問わず、すべての世帯が対象となる。これまで「年収910万円以上の家庭は対象外」という壁があったが、それが取り払われる。

私立高校への支給上限は年額45万7,000円に引き上げられる。これは私立高校の全国平均授業料に相当する金額で、公私を問わず高校授業料の実質無償化が、ようやく全世帯で実現することになる。新たに対象となるのは約80万人と見込まれている。

この「高校無償化の拡充」も、今回の暫定予算にきちんと盛り込まれた。予算の空白で新制度が止まることなく、4月1日から予定どおりスタートする。政治の混乱が家庭の教育計画に影響しなかった、という意味では、素直に喜ばしいことだと思う。

「無償化」でも、ゼロにはならない

もっとも、「無償化」と聞いて全部タダになると思うと少し違う。支援の対象はあくまで「授業料」のみ。入学金・制服代・教材費・交通費などは従来どおり自己負担だ。特に入学初年度は一度にまとまった支出が重なりやすい。制度の恩恵を最大限に受けるために、早めの準備と申請が大切になる。

桜が散るころには、予算も整う

暫定予算は30日に成立する見通しで、本予算も4月11日には自然成立する。11日間の「つなぎ」は、粛々と機能するだろう。

政治はしばしばドタバタする。でも社会の仕組みは、そのドタバタをある程度吸収するように設計されている。花見の宴席が整う前に、予算という名の幕が静かに上がる。そういう春もある。

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