日米首脳会談というと、安全保障や外交の話が注目されがちです。
けれど、今の日本にとって見逃せないのは、やはりエネルギーの話だったのではないかと思います。
今回の会談では、日本が米国のエネルギー分野に最大730億ドル規模の投資を進めることや、日米でエネルギー協力を強化すること、さらに日本が米国産原油の国内備蓄を検討していることが報じられました。背景にあるのは、中東情勢の緊張と、日本の原油調達の弱さです。日本は原油輸入の9割超を中東に依存しており、ホルムズ海峡の混乱は、そのまま日本のエネルギー不安につながります。
ここで改めて感じるのは、原油は「買う先を変えれば終わり」ではないということです。
アメリカから原油を買う。
言葉にすれば簡単ですが、現実はそう単純ではありません。
原油の種類が変われば、精製所は運転条件や製品の取り方を調整する必要があります。調達先の切り替えは、契約先だけの問題ではなく、物流、備蓄、精製、販売まで全部に影響する話です。
しかも今は、すでにその難しさが現実の数字にも表れ始めています。
供給が不安定になれば、企業は手当てに走り、代替調達や在庫確保、輸送の組み直しなどで何とか持ちこたえようとする。けれど、それは当然ながらタダではできません。企業努力で吸収できる範囲を超えれば、そのコストは価格に反映されていきます。
だから私は、ガソリン価格が上がること自体を、すべて不当だと言いたいわけではありません。
もし本当に、調達先の分散のために追加コストがかかった。
輸送ルートの変更で費用が増えた。
備蓄を積み増すために負担が発生した。
精製や供給体制の調整にお金がかかった。
その結果として価格が上がるのなら、それは苦しくてもまだ理解できます。
問題は、その中身が見えないことです。
原油高になると、すぐにガソリン価格の上昇が話題になります。
でも私たちが知りたいのは、「上がった」という結果ではありません。
本当に知りたいのは、なぜ上がったのかです。
輸入価格がどの程度上がったのか。
為替はどれくらい影響したのか。
元売りの卸価格にどう反映されたのか。
備蓄放出や補助金で、どこまで抑えられているのか。
その説明が見えないまま、ニュースの空気だけで値上がりしているように感じるから、納得しにくいのです。
今回、政府は備蓄原油の放出を進めています。危機対応として必要な面は確かにありますし、短期的に市場へ安心感を与える効果もあるのでしょう。ですが、それで終わりではあまりに投げやりです。備蓄は時間を稼ぐ手段であって、弱点そのものを消す答えではありません。
だからこそ問われるのは、その先です。
中東依存をどこまで減らすのか。
米国産原油や他地域からの調達をどう増やすのか。
それを受け入れる港や備蓄、物流、精製体制をどう整えるのか。
企業に負担を押しつけるだけでなく、国は何を支えるのか。
そして、そのコストが価格に出るなら、国民にどう説明するのか。
そこまで示してはじめて、「備蓄を放出しました」という一手が意味を持つのだと思います。
今回の日米首脳会談で見えたのは、アメリカとの協力強化そのものよりも、日本がまだ“調達先を変える力”を十分には持っていないという現実ではないでしょうか。米国との連携は心強いです。けれど、それを暮らしの安心につなげるには、「買います」「備えます」だけでは足りません。受け入れる仕組みを整え、企業の対応力を高め、価格の理由をきちんと説明するところまで必要です。
首脳会談のニュースは遠い話に見えます。
でも、その先で私たちが向き合うのは、結局いつものガソリンスタンドの価格表示です。
だから私は思います。
いま日本に足りないのは、備蓄放出という“その場しのぎ”を打つ力ではなく、上がるなら上がるで、その理由に納得できる国になることなのだと。
ひとこと
備蓄放出は必要でも、それだけで終わるなら心もとない。
本当に欲しいのは「大丈夫です」という言葉ではなく、なぜこの価格なのかが分かる説明なのだと思います。
リンク


