お米5kgが5,000円になった国で——備蓄米入札が映す「2026年の食卓リスク」

4月14日、ほとんどの人が気にも留めなかったニュースがある。

農林水産省が2026年産の政府備蓄米について、2年ぶりの入札を実施した。結果は——落札率わずか5.6%。目標の約20万トンに対し、集まったのは約1万1千トンだけだった。

地味なニュースに見える。だが、この数字の裏側には「令和の米騒動」が残した爪痕と、今年の食卓への静かなリスクが潜んでいる。

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去年、何が起きたのか

2025年、スーパーの米売り場が空になった。

きっかけは2023年の記録的猛暑だった。コシヒカリなど暑さに弱い銘柄の品質が低下し、市場に出回る良質なコメが減った。そこにインバウンド需要の急増、外食・中食市場の拡大が重なり、需給バランスが一気に崩れた。

店頭では5kgのコメが4,000円、5,000円と値段が跳ね上がった。政府が備蓄米の放出に踏み切ったのは、すでに棚が空になってからだった。これが「令和の米騒動」と呼ばれた出来事だ。

価格はどこまで上がったのか

全国のスーパーにおけるコメ5kgの平均価格を振り返ると、その激しさがよくわかる。

時期5kgの平均価格
2024年6月(騒動前)2,561円
2025年3〜5月(高騰期)4,000〜5,000円台
2025年11月(統計上のピーク)5,002円
2025年8月(前年比)3,804円(前年比+45%
2026年4月(現在)3,933円

ピーク時には騒動前の約2倍まで跳ね上がった。現在は落ち着いてきたとはいえ、騒動前と比べると1.5倍以上の高止まりが続いている。「値下がりした」という実感を持てない人がほとんどではないだろうか。

備蓄は「底をついた」まま

令和の米騒動で政府が大量放出した備蓄米。当然、その穴を埋めなければならない。

政府が定める備蓄の目安は100万トン。しかし2025年11月時点の在庫量は32万トン。目安の3分の1以下のままだ。

だから今年、2年ぶりに買い入れ入札を再開した。ところが4月14日の初回入札の落札率はわずか5.6%。なぜこれほど集まらなかったのか。

「政府に売るより、市場で売ったほうが得」という現実

政府の備蓄米買い入れ価格は非公表だが、参考になる数字がある。

指標玄米60kgあたりの価格
米穀機構のコスト指標(2026年産)2万437円
2025年3月の備蓄米入札 平均落札価格2万722円
現在の市中相場(推計)2万5千〜3万円前後

2025年の入札では「市中より約4%高い」価格で政府が買い取っていた。それでも今回、農家や集荷業者が市場を選んだということは、市場価格が政府の買い入れ価格を大きく上回っていることを意味する。

政府が「買いたい」と言っても、市場価格が高すぎて売ってもらえない。これが今の備蓄米の現実だ。備蓄を積み上げたくても積み上がらない構造が続いている。

今年の夏、また猛暑が来る

そしてもう一つ、見逃せない情報がある。

日本気象協会の長期予測によると、2026年の夏は梅雨明けが早く、猛暑になる可能性が高い。さらに気象庁はエルニーニョ現象が発生する確率を約60%と予測している。

2023年の猛暑がコメの品質を落として米騒動の引き金になったことを思えば、今年の夏の天候は「お米の値段」に直結するリスク要因だ。

リスク要因状況
政府備蓄32万トン(目安100万トンの3分の1)
今年の入札初回5.6%と低調。補充は不透明
今年の作付け732万トン見込みで需要を上回る計画
夏の天候予報猛暑・早い梅雨明けの可能性大

作付け面積は昨年より増えており、天候が順調なら今秋の新米は「5kg3,500円前後」まで落ち着く見通しもある。しかし備蓄が薄いまま不作が重なれば、令和の米騒動の再来を否定できない。

「食料安全保障」は遠い話ではない

米は日本人にとって単なる食品ではない。主食であり、エネルギー源であり、有事の際の最後の砦でもある。

国産の主食が「市場原理で備蓄に回らない」「政府が買いたくても売ってもらえない」という構造は、食料安全保障の観点から見ると静かに深刻な問題だ。

今年の秋、スーパーのコメ売り場はどうなっているか。答えは夏の空が教えてくれる。

備蓄米の入札というニュースをきっかけに、そんなことを考えてみてほしい。

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