先日、テレビでこんなニュースが流れました。
「消費者物価指数が前年比+1.4%まで鈍化。3カ月連続で2%割れ」
——でも、ちょっと待ってほしいんです。
スーパーの値上がりは、ぜんぜん反映されていないのでは?
「落ち着いてきた」と言われても、まったく実感がわかない。
なぜ、これほど実感と指数はずれているのか、調べてみました。
「2%割れ」でも、値段は上がり続けている
まず、大きな勘違いをほどいておきます。
「2%割れ」と聞くと、値段が下がったように思えますよね。
でも、違います。前回の記事でも書いたように、値段は今も上がり続けています。
物価指数そのものは、過去最高の「113.0」。
2020年と比べて、13%も高い水準です。
前の月と比べても+0.1%。今月も上がっているんです。
そうです、「2%割れ」が意味するのは、”上がるスピード”が落ちたということ。
たとえるなら、走り続ける車です。
スピードが時速60kmから40kmに落ちた。
でも、止まってもいないし、バックもしていない。
ちゃんと前に進み続けている——これが今の物価です。
なぜ”落ち着いて見える”のか——3つのカラクリ
では、なぜ「上がるスピード」が落ちて見えるのか。
理由は大きく3つあります。
① 去年の急騰(米騒動)の反動
1つ目は、去年がすごく上がったこと。
物価指数は「1年前と比べて」の数字です。
去年すでに大きく上がっていると、今年の伸びは小さく見えます。
象徴的なのが、お米。
記憶に新しい「米騒動」で、去年は価格が急騰しました。
今年はその反動で、前年比の伸びが鈍くなっているのです。
値段が下がったわけではありません。ただ、高いままなだけです。
② エネルギー補助金で抑えている
2つ目は、政府の補助金。
ガソリンや電気代には、いま補助金が出ています。
そのぶん、エネルギー価格が抑えられている。
だから、物価指数も低めに出ているんです。
裏を返せば、補助金が終われば、また跳ね上がるかもしれません。
③「帰属家賃」が指数を下げている
3つ目が、聞き慣れない「帰属家賃(きぞくやちん)」。
これは「持ち家の人の、架空の家賃」のことです。
物価指数は「生活費全体」を測るので、家賃も含めます。
借りている人は、払う家賃を計算に入れる。
でも持ち家の人も、「もし借りていたら払うはずの家賃」を入れるルールなんです。
この帰属家賃が、くせ者。
日本ではほとんど上がらないのに、指数の中で大きな割合を占めます。
クラスの平均点でたとえてみましょう。
- 食料品:80点→90点(すごく上がった)
- 帰属家賃:ずっと50点(動かない)、しかも人数が多い
この2つの平均を出すと、食料品がどれだけ上がっても、動かない帰属家賃に引っ張られて、平均はあまり上がりません。
でも、実際に食べ物を買う人は「90点の値上がり」を肌で感じている。
これが「指数は低いのに、実感は高い」ズレの正体です。
去年は”集中急騰”、今年は”じわじわ”——しかも、まだ続くかも
値上げの「形」も、去年と今年で変わりました。
去年は、米騒動に代表される”集中急騰”。
特定のものが、ドカンと大きく上がりました。
今年は、広く薄く”じわじわ”。
派手な急騰は減りましたが、いろいろなものが少しずつ上がっています。
でも待った!ここで安心はできません。
なぜなら、企業が仕入れる「材料費」は、もっと上がっているからです。
企業向けの物価指数(企業物価指数)は+2.6%。
材料費は2020年から、なんと約3割も上がっています。
(関連記事:企業物価の“落ち着き”は本物か)
しかも最近は、材料費だけでなく「人件費」や「物流費」の上昇も加わってきました。
こうしたコストは、遅かれ早かれ、商品の値段に乗ってきます。
つまり——値上げは、これからもじわじわ続くのかもしれませんね。
実は”基調”が熱い——そもそも「基調」ってなに?
ニュースでよく聞く「基調(きちょう)」。
私もよく分からなかったので、調べてみました。
「基調」とは、物価の”本当の流れ”のこと。
物価には、一時的な要因が混ざります。
天気で野菜が高い、補助金で電気が安い……そういう一時的なブレがあります。
それらを取り除いて、ならして見た”地力”が「基調」です。
体重でたとえると分かりやすいです。
食べた直後は重く、汗をかくと軽い。毎日ブレますよね。
そのブレをならして見た「本当の体重の傾向」——それが基調です。
では、物価の基調はどうでしょうか。
天気やエネルギーの影響を除いた指標(新コアコアCPI)は、+1.9%。
表面の+1.4%より、高いんです。
つまり、物価の”地力”は、表面の数字より熱い。
「落ち着いた」と言うには、まだ早いということです。
まとめ——「落ち着いた」を鵜呑みにしない
まとめます。
「物価指数が2%割れ」と聞くと、つい安心しそうになります。
でも、調べて分かったのは、その逆でした。
- 値段は今も上がり続けている(指数は過去最高)
- 去年の急騰の反動、補助金、帰属家賃が、指数を低く見せているだけ
- 企業の材料費・人件費・物流費は、もっと上がっている
- 物価の”基調”は+1.9%と、表面より熱い
つまり、「落ち着いた」を鵜呑みにするのは危険。
これからもじわじわ値上げが続くと考えて、備えておくのが安心です。
(関連記事:物価は上がる、景気は落ちる——日銀展望レポート)
ニュースの見出しだけでなく、”中身”まで見る。
それが、家計を守る第一歩なのかもしれません。
あわせて読みたい


