日経平均が一時6万3000円を超えた。前日比の上げ幅は3,320円——過去最大の記録を更新した。
ニュースは「史上最高値」「バブル後の最高水準を更新」と大きく報じた。でも、その報道を見ながら「うちの生活、何か変わった?」と感じた人は多かったんじゃないかと思う。
その違和感は、たぶん正しい。
実は日経平均は「庶民の株」をほとんど見ていない
日経平均は225社の平均、と聞くとなんとなく幅広い企業の状態を映しているように聞こえる。でも実際の計算式は少し特殊で、「株価が高い会社ほど指数に大きく影響する」仕組みになっている。
わかりやすく言うと、こんな感じだ。
- ユニクロ(ファーストリテイリング)の株価が1%上がると → 日経平均が約17円動く
- 大手銀行(みずほFG)の株価が2倍になっても → 日経平均は約4円しか動かない
225社もあるのに、上位5社だけで指数全体の3分の1を占めている。つまり日経平均は、私たちが毎日使うサービスや地元の企業ではなく、超高額の”特定の株”の動きをとても大きく拾う指数なのだ。
一方で、TOPIXという指数は時価総額全体を広く反映しているため、より多くの会社の実態に近い。今回の急騰でも、日経平均はTOPIXより8%ポイントも多く上昇していた。その差がそのまま「一部の値嵩株だけが高騰した」証拠と言えるかもしれない。
上がったのはAIと半導体と停戦への期待——私たちの暮らしとは、少し遠い話かもしれない
では、今回の急騰はなぜ起きたのか。大きく3つの流れが重なった。
ひとつ目は、中東での停戦合意への期待。「戦争が終わりそうだ」という観測が広がり、投資家が一斉に買いに動いた。
ふたつ目は、AI・半導体株の連鎖。韓国サムスンの半導体部門が過去最高益を記録し、その流れが日本の関連株にも波及した。
みっつ目は、海外からの大量の資金流入。4月だけで週あたり2〜4兆円規模の外国資本が日本株に入ってきたとされる。
どれも「期待」や「海外のお金の動き」が中心で、日本の家庭の消費や中小企業の業績が改善した話ではなかった。
そして、もうひとつ見落としたくないのが「踏み上げ」という現象だ。空売り(株が下がることに賭けていた投資家)が、予想に反して株が上がり始めたため損失を抑えようと慌てて買い戻す。その連鎖が指数を実態以上に押し上げた可能性がある。つまり、実力ではなく「買わざるを得ない状況」が一部の高値を作ったかもしれない。
透析チューブが足りなくなりそうな国で、数字だけが先に走っている
株価が最高値を更新した同じ時期、別のニュースが静かに流れていた。
中東のホルムズ海峡が事実上封鎖状態となり、プラスチックの原料となる「ナフサ」の輸入が滞り始めている。その影響が食品トレーやゴミ袋だけでなく、医療用品にまで及んでいる。透析に使うチューブや手術中の廃液容器など、「使い捨て」が前提の医療消耗品の一部が、4月〜8月にかけて供給不足に陥る可能性があると専門家は指摘している。
株価は「停戦が実現すれば問題は解決する」という期待を先取りして動く。でも、実際のサプライチェーンの傷は、停戦が合意されてもすぐには癒えない。その時間差が今、静かに広がっている。
「期待が崩れるとき」に備えて、何を知っておけばいいか
日経平均のPER(株価収益率)は現在24.5倍。これは「今の企業の利益に対して、株価がかなり高く評価されている」ことを示している。日本経済新聞が「一足飛びの過熱感、経験則は調整示唆」と書き、野村證券も「3〜4週間以内に上げ止まる可能性」を指摘している。
期待通りに停戦が実現し、ナフサ問題も解消され、AI需要も続くなら、株価はさらに上がるかもしれない。でも、どこかでつまずけば——踏み上げ分の反動も含めて——下落幅が上昇幅を超える展開も考えられる。
何かを不安視しているわけではなく、「そういう局面だ」と理解しておくだけで、ニュースに振り回される気持ちが少し落ち着くかもしれない。
株価より先に、自分の家計の体温を確かめてみる
株価が上がっても生活が苦しいのは、あなたのせいじゃない。
日経平均という数字は、一部の超高額株の動きをとても大きく映す鏡で、スーパーの値段やパートの時給とは別の世界で動いている。
気になるのは、その鏡が「期待」だけで動いているときだ。停戦への期待、AIへの期待、外国資本の流入——どれも現実ではなく「そうなってほしい未来」への賭けで、それが崩れたときの揺り戻しは大きい。
株価より先に、自分の家計の体温を確かめてみる。固定費は見直せているか、もし急に出費が増えたとき対応できる余裕はあるか。そういうことを少し考える時間を作るのが、今の自分にできる一番の「経済対策」なのかもしれない。
そんなことを思いながら、今日も「よりみち」してみた。
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