五月病は新人だけじゃない——「頑張りすぎ」が壊す、年齢を問わないメカニズム

GWが明けた今週、何となく体が重い、気持ちが乗らない——そんな感覚がある方はいませんか。

「五月病は新人がなるもの」と思っていませんか。でも、あれは本当に新人だけの話なのでしょうか。

ITmediaビジネスオンラインに、タイムリーな記事が出ていました。「”やる気の押し付け”が新人を壊す? 五月病が生まれる構造的な理由」(窪田順生氏)という記事です。読んでいて、ふと思ったのです。これは新人だけの話ではないな、と。

正社員の5人に1人が五月病を経験し、年間7.6兆円の経済損失があるというデータがあります。でもそれ以上に気になったのは、「やる気の高い人ほど燃え尽きやすい」という逆説でした。

頑張ることは良いことです。でも「過度に」が加わった瞬間、心のどこかに無理がかかり始める。それは新入社員だけでなく、転職したばかりの中堅社員にも、昇進したばかりの管理職にも、長いプロジェクトをやり遂げた私たちにも、同じように起きうることだと思います。

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5人に1人が経験——五月病は「他人事」ではない

マイナビが全国の正社員2万人を対象に実施した調査によると、約5人に1人(18.5%)が五月病を経験しています。さらに、五月病が原因で転職したことが「ある」と答えた正社員は20.9%にのぼります。

横浜市立大学と産業医科大学の共同研究では、五月病を含むメンタル不調による経済損失は日本全体で年間約7.6兆円と試算されています。これは国家規模の問題です。

「でも自分は大丈夫」と思いたいところですが、この数字を見ると、職場の5人のうち1人は経験しているということです。もしかしたら、今まさにその状態にある方もいるかもしれません。

なぜ「5月」なのか——長い消耗戦の果てに

五月病という言葉が日本で広まったのは1960年代後半のことです。学生運動が盛んだったあの時代、運動に参加せず「無気力」と揶揄された学生たちの間に広がりました。背景には「熾烈な受験戦争を乗り越えた後の燃え尽き」がありました。

これは今の新卒社員にもそのまま当てはまります。就職活動という長い「消耗戦」を勝ち抜き、入社後の研修をこなし、本格的に配属されるのが——ちょうど5月です。「戦いが終わった瞬間」に無気力が訪れるのは、構造的に見れば当然とも言えます。

大切なのはここです。五月病の本質は「大きなストレスの後に訪れる燃え尽き」だということ。それは新人に限った話ではありません。

やる気が高い人ほど、早く壊れる

記事の中で最も印象的だったのが、この逆説です。

「意欲の高い若手」や「仕事や会社に強い期待を抱いている若手」ほど、早く燃え尽きて心身の不調に陥りやすい——。

高いところから落ちるほど、ダメージは大きい。理想が高く、やる気が強いほど、現実とのギャップに打ちのめされやすいということです。

これは新人だけの話でしょうか。転職して新しい職場に意気込んで入った人も、昇進して「さあここからだ」と気合を入れた人も、大きなプロジェクトを「絶対に成功させる」と心に誓った人も——同じ構造の中にいます。

燃え尽きは、頑張った人にしか訪れません。だからこそ、頑張れる人ほど注意が必要なのです。

中年にも起きている「燃え尽き」

「最近の若者はメンタルが弱い」と言いたがる中高年層もいますが、記事はこう指摘します。「五月病は若者の親の世代から存在している」と。米国にも「Winter Blue」と呼ばれる似た現象があります。

理想ややる気に燃えていた人が急に無気力になる現象は、名前がついていないだけで、人類社会では昔からあった普遍的なことなのです。

中年の場合、きっかけはさまざまです。長年勤めた会社でのプロジェクト完了、子どもの巣立ち、親の介護の始まり——「大きな局面が終わった後」に、ふと力が抜けてしまうことがあります。それは弱さではなく、ずっと頑張ってきた証拠かもしれません。

「やる気を押し付ける」社会の問題

日本はスポ根・根性論を好む文化です。テレビドラマや就活の場でも「やる気と希望に満ちあふれた若者」というステレオタイプが根強くあります。

そのせいで、多くの人が「やる気のある自分」を演じることを強いられます。心にもない言葉で自己PRをし、興味のない話にうなずき、「何でもやります」と前のめりのふりをする。その消耗がじわじわと積み重なり、ある日ポキンと折れてしまう。

管理職や先輩が「部下のやる気を引き出そう」と意気込むほど、逆効果になることがあります。記事が言うように、人間がやる気になるのは本人の意思でしかないからです。できるのは、自発的に仕事に向き合えるような「環境を整える」ことだけです。

「力を抜いていい」という許可を、自分にも

記事の最後はこう締めくくられています。「五月病になるのが当たり前」くらいに力を抜いて接したほうが、新人も若手も伸び伸びと働いてくれるかもしれない、と。

これは、周りへの接し方だけでなく、自分自身への言葉としても受け取れると思います。

GWが明けて体が重い。やる気が出ない。そんな自分を「怠けている」と責めなくていいかもしれません。それはずっと頑張ってきた心が、少し休もうとしているサインかもしれないからです。

頑張ることは大切です。でも「過度に」が加わり続けると、どこかで必ず無理がきます。五月病は新人だけの問題ではありません。頑張れる人間なら、誰にでも起きうることです。

今週、少しだけ力を抜いてみてもいいかもしれません。

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この記事を書いた人

時事・経済・社会問題を「身近な視点」から読み解くライター。日常のちょっとした引っかかりを起点に、政治・経済・テクノロジーの動きを平易な言葉で伝えることをテーマにしている。よりみち世相録では、3分で読めるニュース解説を毎週更新中。

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