賃上げ5%、でも手取りが増えない——2026年、給与から引かれるものが静かに増えた

春闘で5%超えの賃上げが続いています。

ニュースを見ていると「過去最高水準」という言葉が並ぶので、なんとなく良い方向に向かっているような気がする。

でも、給与明細を見るたびに、なんだかすっきりしない。財布が重くなった気がしない。

その感覚、たぶん正しい。

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2026年、こう変わった

今年から、給与から引かれるものがいくつか変わっています。

まず、再生可能エネルギーの賦課金。電気代の明細に含まれているこの金額が、1kWhあたり3.98円から4.18円に引き上げられました。制度が始まった2012年以来、最高の水準です。月260kWhを使う標準的な家庭では、年間600円ほどの増加になります。

次に、電気・ガスの補助金が3月で終わりました。補助があった頃と比べると、光熱費だけで月1,000円以上増えた家庭も少なくない。

国民健康保険料の上限は110万円に引き上げられました(昨年は109万円)。フリーランスや自営業の方には、直接響きます。

介護保険料も、40歳以上なら毎月の給与から引かれています。多くの自治体で2026年度から引き上げられており、年間で数千円単位の増加になっているところもあります。

給与が上がると、社会保険料の計算のもとになる「標準報酬月額」も上がります。健康保険も厚生年金も、セットで増えていく仕組みです。賃上げ5%でも、手取りで実感できるのは2〜3%にとどまるという試算もある。

40代・50代・60代、それぞれの「今じゃない」

NISAをやった方がいい——それは、みなさんご存知だと思います。

でも現実は、なかなか難しい。

40代は、子どもの教育費と住宅ローンの真っただ中にいます。手取りが少し増えた分は、来春の塾代に消えていく。

50代になって、ようやく子どもが独立してきます。「これからだ」と思った矢先に、今度は親の介護が始まることも珍しくありません。長い間、介護保険料を払い続けてきた側が、今度は使う側のお世話をする番になる。

60代で退職金が入り、「少し楽になった」と感じたころ、孫が生まれます。七五三、入学のお祝い、誕生日のプレゼント——孫への出費は青天井で、老後のために取っておいたお金が、気づかないうちに少しずつ減っていきます。

以前この場で書きましたが、老後2000万円を新NISAで間に合わせようとすると、53歳がひとつのリミットになります。でも53歳は、子どもの大学費用・住宅ローンの終盤・親の介護が重なる、家計でいちばん苦しい時期でもあります。「今月は孫のお祝いがあって」「来月から始めよう」が積み重なって、気づけば60代になっていた——そんな話は、決して珍しくないはずです。

問題は「やる気」ではない

NISAが良い制度なのは本当です。

ただ、「なぜできないか」を正直に言うと、お金が回らないから、ではないでしょうか。

賃上げで増えた分は、保険料・光熱費・物価の上昇が吸い取っていきます。残った分で将来に備えなさい、というのは正論ですが、現実とはなかなか噛み合わない。

このまま構造が変わらなければ、「積み立てられる人」と「どうにもならない人」の差は、静かに、でも確実に広がっていく。

だからこそ、まず「なぜ楽にならないのか」に名前をつけることが大切だと思っています。仕組みを知るだけで、少し気持ちが楽になることもある。

来週、街の声が数字になる

5月13日(水)に、内閣府から4月の景気ウォッチャー調査が発表されます。

タクシーの運転手さん、スーパーの店員さん、美容師さんなど、街で働く方々が「景気をどう感じたか」を答える、現場の体感温度計のようなデータです。

賃上げと値上がりが同時に進む今、街の声はどちらに傾いているのでしょうか。来週、また一緒に確認しましょう。

今日も読んでくださって、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

時事・経済・社会問題を「身近な視点」から読み解くライター。日常のちょっとした引っかかりを起点に、政治・経済・テクノロジーの動きを平易な言葉で伝えることをテーマにしている。よりみち世相録では、3分で読めるニュース解説を毎週更新中。

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