新人が辞めることは昭和から変わっていない——でも「辞め方」が変わったことが、今の企業に突きつけているもの

4月になると、退職代行サービスのSNSがざわつく。「本日◯件のご依頼をいただきました」という投稿が毎年流れてくるようになって、もう何年になるだろう。

かつて「3年以内に3割が辞める」と言われ始めた頃、世間は驚いた。でも今は、その数字すら「そんなものか」と受け流される空気がある。

ところが、少し立ち止まって考えると、気づくことがある。「新人が辞める」という現象自体は、昭和の時代から変わっていない。変わったのは、辞め方だ。

目次

結論:採用・配置・育成の構造問題

新人が早期に退職する背景には、個人の「根性不足」や「忍耐力の欠如」だけでは説明できない構造的な問題がある。

「辞められる環境が整った」こと、「配属や上司を選べない現実」、そして「育成責任を現場に押しつける経営の構造」——この3つが重なっている。

要点3つ

要点① 第二新卒市場が「辞められる環境」を整えた

かつては「新卒カード」を使い切ったら終わり、という空気があった。だから多少つらくても、最初の会社にしがみついた。

今は違う。第二新卒という概念が定着し、転職市場が成熟した。厚生労働省の調査によると、第二新卒採用を実施している企業は全体の52.6%、大手企業では87.9%にのぼる。「辞めても次がある」という確信が、辞める行動のハードルを下げた。

退職代行の普及はその延長線上にある。「辞めることへの罪悪感」を外注できるようになったと言えば、聞こえは悪いかもしれない。でも裏を返せば、それだけ「辞めにくい空気」が職場に充満していた、ということでもある。

要点② 配属ガチャと上司ガチャ——選べない現実

「配属ガチャ」という言葉が出てきたのはいつ頃からだろう。希望とは無関係に配属先が決まり、上司も選べない。

ある女性は、配属された部署の雰囲気に入社初日から違和感を覚え、その日のうちに退職代行に連絡したという。また別の男性は、3年前に新卒で入社した会社を辞め、その後70社以上に応募した経験を持つ。「仕事内容は好きだったが、上司との関係が耐えられなかった」と言う。

この2人は別々の話だが、共通しているのは「環境を選ぶ手段がなかった」という点だ。辞めることで、初めて自分で環境を選ぶ権利を手に入れた。

要点③ 「指導員の責任」という名の先送り

新人が辞めると、現場の指導員や先輩が責められることが多い。「もっとうまくフォローできなかったのか」「コミュニケーションが足りなかった」と。

でも、これは本当に指導員の問題なのだろうか。

配属の仕組みを変えない、採用基準を見直さない、働く環境の改善を後回しにする——これらは経営の判断だ。それを棚に上げて現場に責任を押しつけるのは、経営陣による「判断の先送り」のように感じる。

背景:大手と中小の採用戦略格差

第二新卒採用を積極的に進める大手企業は、早期離職者を「他社が手放した人材」として再獲得している。この構造の中で、中小企業は採用コストをかけて育てた人材を大手に持っていかれる立場に置かれやすい。

「採用コストをかけて入社させても、辞められたら損失だ」という経営者の声は理解できる。だが、辞められない職場をつくる努力より、辞められた後の採用に注力する構造は、経営陣にとっての「理想の先延ばし」でしかないとも言える。

ひとこと

「入口が明るくなるほど、出口の暗さが気になる」と思っていた。でも最近は、出口に人が集まること自体が、入口と職場そのものへの問いかけなのかもしれない、と感じている。

辞め方が変わったのは、辞めやすくなったからだ。それを責めるより、辞めたくない職場にするための一歩を、経営が踏み出すしかない。

出口に人が集まる前に、入口と職場そのものが変わるしかない。

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