給料が増えたわけじゃないのに、実質的な手取りが増える。
そんな話が、2026年4月からひっそりと始まっていた。
「食事補助の非課税枠が、月3,500円から7,500円に引き上げられた」——正直、最初にこのニュースを見たとき、ピンとこなかった。食事補助って何?そもそも自分に関係ある話なの?と思った方も多いはずだ。
今回は、知っているかどうかで差がつく「食事補助」の話をまとめてみた。
そもそも「食事補助」って何だろう
会社が従業員の昼食代を一部負担してくれる制度のことだ。
社員食堂がある大手企業なら、200円でランチが食べられる——というアレが典型例。でも、社員食堂がない中小企業でも、仕出し弁当・食事券・加盟店で使えるICカードなど、さまざまな形で導入できる制度だ。
そしてここが重要なのだが、この「会社が出してくれる食事補助の一定額まで」は、所得税がかからない。つまり、会社から食事の形で受け取ったお金は、給料とは別扱いになる。
42年間、ずっと3,500円だった
この非課税の上限額が、ずっと「月3,500円」だった。
いつからかというと、1984年(昭和59年)から。それが2026年3月まで、42年間も変わっていなかった。
1984年の缶コーヒーは100円だった。それが今や150円を超えている。牛丼は380円から590円になった。物価はこれだけ上がっているのに、食事補助の非課税枠だけは昭和のままだったのだ。
それがようやく、2026年4月から「月7,500円」に引き上げられた。42年ぶりの改正だ。
「第3の賃上げ」と呼ばれる理由
今、世間では「賃上げ」が話題だ。ベースアップ(基本給引き上げ)が第1の賃上げ、手当増加が第2の賃上げ。そして今回の食事補助拡充が「第3の賃上げ」と呼ばれている理由がある。
たとえば、会社が月7,500円の食事補助を出してくれたとしよう。
| 比較 | 手元に残る金額 |
|---|---|
| 現金で月7,500円の賃上げをした場合 | 所得税・社会保険料が引かれ、約5,500〜6,000円 |
| 食事補助として月7,500円を受け取った場合 | 7,500円まるごと使える |
現金でもらうより、食事という形で受け取った方が手元に残るお金が多い。これが「第3の賃上げ」と呼ばれるゆえんだ。
非課税にするための「2つの条件」
ただし、食事補助を非課税にするには条件がある。これを知らないと、せっかくの制度が「ただの課税対象」になってしまう。
条件①:従業員が食事代の半額以上を自分で払うこと
たとえば500円の昼食なら、自分で250円以上出す必要がある。会社がまるごと全額出してしまうと、非課税にならない。
条件②:会社が負担する額が月7,500円(税別)以下であること
会社の負担が月7,500円を1円でも超えると、超えた分だけでなく全額が課税対象になってしまう。上限ぴったりの運用が重要だ。
そして、もうひとつ大事な注意点がある。
⚠️ 現金で「食事手当」として振り込んでもらうのはNG
給与明細に「昼食補助 7,500円」と書いて現金で振り込まれた場合、それは「食事補助」ではなく「給与」とみなされ、1円も非課税にならない。あくまでも「食事そのもの」または「食事にのみ使えるもの」として受け取ることが必要だ。
社員食堂がない会社でも使える
「うちの会社に社員食堂なんてない」と思った方も安心してほしい。食事補助の形はさまざまある。
| 形態 | 内容 |
|---|---|
| 社員食堂 | 大企業でよくある食堂での補助 |
| 仕出し弁当・宅配弁当 | オフィスに届けてもらうお弁当の一部を会社負担 |
| 食事券・電子食事チケット | 加盟している飲食店やコンビニで使えるチケット |
| オフィス設置型 | 冷蔵庫・自販機に惣菜・軽食を設置して購入補助 |
特に「食事券」や「電子食事チケット」サービスを使えば、近くのコンビニや飲食店を「社食代わり」に使える仕組みが整っている。社員数が少ない中小企業でも導入しやすい。
テレワーク中でも対象になる
「在宅勤務だから関係ない」と思う必要もない。
仕出し弁当サービスや食事チケットは、勤務場所を問わず制度設計できる。テレワーク中でも、会社が「食事にのみ使えるもの」として補助を提供する形であれば、非課税の恩恵を受けられる。
実際、2026年4月の改正を機に「テレワーク社員にも食事補助を拡大する」という企業の動きも出始めている。
会社側にもメリットがある
「なぜ会社は食事補助をやるの?」という疑問を持った方もいるかもしれない。実は、会社にとってもメリットが大きい。
食事補助の費用は損金算入(経費扱い)できるため、法人税の節税につながる。さらに、賃上げと違って社会保険料の計算対象にならない。
同じ「従業員の手取りを月7,500円増やす」でも——
| 方法 | 会社の実質コスト(月あたり) |
|---|---|
| 賃上げで7,500円増やす場合 | 約8,600円(社会保険料の会社負担分が上乗せ) |
| 食事補助で7,500円出す場合 | 7,500円(社保なし) |
つまり、会社が「社員の手取りを増やしたい」と思ったとき、賃上げよりも食事補助の方がコスト効率がいい。使わない手はない制度なのだ。
今すぐ確認してほしいこと
この改正は2026年4月から始まっている。もう始まっているのに、まだ旧制度(3,500円上限)のままの会社や、そもそも制度を導入していない会社もある。
会社員の方は、以下を確認してみてほしい。
- 自分の会社に食事補助制度はあるか?
- あるなら、4月以降に上限が7,500円に引き上げられたか?
- 制度はあっても、自分が利用できていないものはないか?
総務・人事の担当者や経営者の方は、この機会に導入・拡充を検討してみることをお勧めしたい。賃上げより手取りへの効果が高く、会社負担も少ない。双方にとって得な制度だからだ。
知っている人だけが恩恵を受けている制度は、まだほかにもたくさんある。「なんとなく知らなかった」では、本当にもったいない。
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