コンビニのお菓子売り場で、ふとポッキーに手を伸ばした。
238円だったはずが、245円になっていた。
「また値上がりしたのか」——そう思いながらかごに入れた人も多いと思う。
でも今回の値上げには、スーパーの棚の話だけじゃない、少し遠い場所の話がつながっている。
カカオ豆が「半分」になった国がある
ポッキーのチョコレートは、西アフリカのカカオ豆から作られる。
世界のカカオの約6割は、コートジボワールとガーナという2つの国が担っている。日本の輸入でいえば、約7割がガーナ産だ。
そのガーナで、ここ数年、深刻なことが起きている。
干ばつ、豪雨、カカオの木を枯らす病害——それに加えて、金の違法採掘のために農地が破壊される問題まで重なった。
結果、ガーナのカカオ収穫量は2021年の約100万トンから、2024年には約50万トンへと、ほぼ半分に落ち込んでいる。
供給が半分になれば、価格は上がる。
国際市場のカカオ先物価格は2025年に過去最高値を更新し、数年前の4倍近い水準にまで達した。
「カカオだけ」の問題じゃない
江崎グリコが今回の値上げを説明するとき、カカオ豆と並んで挙げているのが「物流費・エネルギー費・人件費の上昇」だ。
ポッキーを作るには、工場の電気代がかかる。
ガーナから日本まで原料を運ぶ船の燃料代もかかる。
それを倉庫に保管して、トラックでコンビニに届ける——その全工程のコストが、ここ数年でじわじわと上がっている。
「ポッキーだけの問題」に見えるこの値上げは、じつは輸入食品全体に共通する構造の話だ。
コーヒー豆もバナナも、原材料・輸送・エネルギーという3つのコストを抱えていることに変わりはない。
それでも「美味しさ」をあきらめない会社たちがいる
値上げの話ばかりでは終わらせたくない、と思う出来事が起きている。
イオンが発売した「チョコか?」という商品をご存じだろうか。
カカオ豆を一切使わず、ひまわりの種を特殊な技術で加工して作ったチョコレートの代替品だ。
「チョコのような味なのに、チョコじゃない」という少し不思議な一品は、発売からわずか8ヶ月で100万個を突破した。
他にも、不二製油はイナゴマメ(キャロブ)とエンドウ豆を組み合わせた代替素材を開発し、ナチュラルローソンにはごぼうから作ったチョコ風のお菓子まで登場している。
カカオが手に入りにくくなったなら、別の道を探す——その努力は、正直、ちょっとすごいと思う。
「元の値段には戻らない」という現実と、その先
菓子業界の見立てはほぼ一致している。
「2022年以前のカカオ価格には、もう戻らない」——それが共通認識だ。
気候変動は続いているし、カカオの木は新たに植えてから収穫まで数年かかる。
すぐに供給が回復するような話ではない。
だとすれば、ポッキーの7円値上がりは「一時的な我慢」ではなく、お菓子というものがゆっくり変わっていく途中の、ひとつの節目なのかもしれない。
ひまわりの種やごぼうから生まれたチョコが棚に並ぶ日が来るとは、5年前には思わなかった。
でもそういう変化が、こっそり始まっている。
そんなことを思いながら、今日もよりみちしてみた。
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