7月の住宅ローンの引き落とし日、少し多めに引かれていないだろうか。
もし変動金利で借りているなら、それは気のせいではない。2025年12月に日銀が行った利上げの影響が、2026年7月の返済分からいよいよ家計に届いてくる。
「利上げのニュースは知っていた。でも自分の返済が変わるのはいつなのか」——そこまで把握できている人は意外と少ない。今日はその仕組みを、数字を使って整理したい。
なぜ7月から上がるのか——仕組みを30秒で理解する
変動金利型の住宅ローンには、独特のタイムラグがある。
日銀が利上げをしても、翌月すぐに返済額が増えるわけではない。流れはこうだ。
- 2025年12月:日銀が政策金利を0.5%→0.75%に引き上げ
- 2026年4月:各銀行が住宅ローンの基準金利を改定
- 2026年7月:返済額に反映(←ここが今回の節目)
変動金利は「半年ごとに金利を見直し、その2〜3ヶ月後から返済に反映する」という仕組みになっている。だから昨年末の利上げが、今年7月にようやく家計に届くわけだ。
大手銀行の変動金利、2年でどれだけ上がったか
「0金利の感覚」がまだ残っている人も多いと思うが、現実はすでに動いている。
| 銀行 | 2年前(2024年初) | 現在(2026年5月) | 上昇幅 |
|---|---|---|---|
| 三菱UFJ銀行 | 0.345% | 約0.62% | +0.275% |
| 三井住友銀行 | 0.375% | 約0.73% | +0.35% |
| みずほ銀行 | 0.375% | 約0.63% | +0.25% |
| auじぶん銀行 | 0.169% | 約0.3%台 | +0.13% |
2〜3年前まで「0.3〜0.5%台が当たり前」だった時代は終わり、現在は0.9〜1.1%台が新しい基準になりつつある。「まだ1%以下だから大丈夫」と思うかもしれないが、問題はこれからだ。
実際の返済額はいくら増えるのか
今回(2025年12月の利上げ分)で銀行の基準金利は約0.25〜0.35%上昇する見通しだ。借入残高3,000万円・残り30年の場合、7月からの増加額はおよそこうなる。
| 金利上昇幅 | 月々の増加額(残高3,000万・残30年) |
|---|---|
| +0.1% | 約1,400円 |
| +0.25%(今回の見込み) | 約3,500円 |
| +0.5% | 約6,900円 |
| +1.0% | 約13,800円 |
今回の7月分だけなら月3,500円前後の増加だ。年間にすると4万2,000円。「まあ許容範囲かな」と思う人もいるだろう。ただし、この話には続きがある。
「どこで借りているか」で影響の出方が全然違う
変動金利の金利見直しは、メガバンクもネット銀行もどちらも半年ごと(4月・10月)が業界標準だ。ここは同じ。
大きく違うのは「返済額がいつ変わるか」だ。
| 5年ルールあり(メガバンク・auじぶん・住信SBI等) | 5年ルールなし(ソニー銀行・PayPay銀行・SBI新生銀行等) | |
|---|---|---|
| 金利の見直し | 半年ごと | 半年ごと(同じ) |
| 返済額の変化 | 5年に1回 | 半年ごとに直接変わる |
| 急な増加リスク | 低い(緩衝あり) | 高い(直撃) |
ネット銀行で「5年ルールなし」の場合、日銀が利上げをして銀行が金利を改定すると、次の見直し(4月か10月)からすぐ返済額が増える。メガバンクのように「5年後にまとめて反映」という緩衝がない分、金利上昇の影響が早く・直接的に家計に届く。
自分がどちらのタイプかを把握しておくことが、備えの第一歩になる。
知っておきたい「5年ルール」と「125%ルール」
メガバンクや一部のネット銀行で採用されているこの2つのルール、内容を整理しておこう。
5年ルールとは、「金利が上がっても、毎月の返済額は5年間変えない」というものだ。半年ごとに金利は見直されるが、実際の引き落とし額は5年に一度しか変わらない。急な家計の混乱を防ぐための仕組みだ。
125%ルールとは、その5年ごとの見直しで返済額が増えるとき、「前回の1.25倍を上限にする」というものだ。たとえば月8万円だった返済額は、どんなに金利が上がっても最大10万円までしか増えない。
一見、借り手に優しいルールに見える。ところが、ここに落とし穴がある。
「未払い利息」が静かに積み上がるリスク
具体的な数字で説明しよう。
2016年に3,000万円・35年・金利0.5%で借りたとする。月々の返済額は約7万8,000円だ。
5年ルールで2021年まで返済額は据え置き。2021年の見直しで金利が1.0%になり、月8万7,000円に増えた(125%の上限9万7,500円以内なので問題なし)。
そして2026年。さらに金利が上昇し、本来必要な返済額が11万2,000円になったとしよう。
このとき125%ルールが発動する。
- 125%ルールの上限:8万7,000円 × 1.25 = 10万8,750円
- 本来必要な返済額:11万2,000円
- 差額:3,250円 / 月が「未払い利息」として蓄積
毎月3,250円の不足が積み上がっていくと——
- 1年後:約3万9,000円
- 5年後:約19万5,000円
- 10年後:約39万円
この未払い利息は元本とは別に残り続け、ローン終了時に一括請求される可能性がある。返済が終わったと思ったら数十万円の請求が来る——そういう事態が、理論上は起こりうる。
現時点(金利0.75%水準)では、ほとんどの人は125%の上限には引っかかっていない。ただし今後、日銀がさらに利上げを続けると話が変わってくる。
今後もまだ上がる——日銀の見通し
野村證券・第一生命経済研究所などの予測では、日銀は2026年7月にさらなる利上げ(0.75%→1.0%)を行う可能性があるとされている。そうなれば、2027年1月の返済分からまた上昇する。
| 時期 | 予測される政策金利 | 返済への影響 |
|---|---|---|
| 2026年7月(返済反映) | 0.75%(現在) | 今回の増加 |
| 2026年10月(見直し) | 1.0%の可能性 | 2027年1月から反映 |
| 2027年前半 | 1.25〜1.5%の見方 | さらに増加の可能性 |
「7月で終わり」ではなく、これが数年かけて続いていく流れだと思っておいた方がいい。
今すぐ確認してほしい3つのこと
難しい判断をする前に、まず自分のローンの現状を把握することが先決だ。
- 借りている銀行に「5年ルール・125%ルール」があるか確認する
メガバンクはほぼあり。ソニー銀行・PayPay銀行・SBI新生銀行などはない。auじぶん銀行・住信SBIはあり。契約書か銀行への電話で確認できる。 - 現在の適用金利と残高を確認する
毎年届く「返済予定表」またはネットバンキングのアプリで確認できる。 - 繰り上げ返済の余力があるか考える
元本を減らせば、金利が上がっても利息の増加を抑えられる。ただし手元に3ヶ月分以上の生活費を残した上で判断したい。
固定金利への借り換えは「残りの期間が10年以上あり、今後1%以上さらに上がると予想するなら検討の価値あり」という判断基準だ。ただし借り換え費用(20〜60万円程度)も含めて計算する必要がある。
まとめ——「利上げ」を「自分の家計の話」に変換する
住宅ローン利用者の約75%が変動金利を選んでいる。ゼロ金利が続いた20年間で変動金利が有利だったのは事実だ。ただしその前提は、静かに崩れ始めている。
どこの銀行で借りているかで、影響の出方はかなり違う。メガバンクなら5年ルールが緩衝材になるが、5年ルールのないネット銀行なら半年ごとに返済額が直接変わる。まず自分のローンがどちらのタイプかを確認してほしい。
7月に引き落とし額が増えたとき、「なんか増えたな」で終わらせないでほしい。その数千円の変化の裏には、今後数年かけて続いていく金利上昇のサインが含まれている。
まず自分のローンを確認する。それだけで、家計の備えは大きく変わる。
一次情報・参考
- 日銀追加利上げで住宅ローンはいつ上がる?2026年の変動金利予想を解説 — モゲチェック
- 住宅ローン金利2026年5月の最新動向 — モゲチェック
- 住宅ローン変動金利の5年ルール・125%ルールとは? — モゲチェック
- 変動金利の5年ルールと125%ルールとは? — SBI新生銀行
- 日銀追加利上げ予想 2026年2回・2027年1回を新たなメインシナリオに — 野村證券
- 次回利上げは7月 — 第一生命経済研究所
- 住宅ローンの5年ルール・125%ルールがない銀行は? — マネーキャリア
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