プリンが消える——ナフサ不足が食卓を直撃する日

スーパーの冷蔵コーナーに、プリンがなくなるかもしれない。

「中東の話でしょ」と思っていたら、気がついたら手元の話になっていた——そういう展開が、静かに始まっている。

今日(4月27日)、業界団体の調査で明らかになった。食品企業の4割がすでにナフサ不足の打撃を受けている。そして5月上旬から、プリンの販売休止を検討している企業があると日本経済新聞が報じた。

ナフサ。聞き慣れない言葉かもしれない。でもこれ、ガソリンより私たちの日常に近いところで使われている物質だ。

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「プリンが買えなくなる」——その理由がホルムズ海峡にある

話は今年の2月下旬に遡る。ホルムズ海峡が事実上封鎖された。

日本はナフサの多くを中東からタンカーで輸入している。その海路が塞がれたことで、ナフサの安定調達に黄信号が灯った。

「原油の話は聞いた。でもプリンと何の関係があるのか」——そう思う人も多いだろう。ガソリンや電気代への影響はすでに多くのメディアが報じてきた。でも今回露わになったのは、もう一本の経路だ。

ナフサ→プラスチック容器→食品。

プリンのカップ、ヨーグルトの容器、惣菜のトレー——あのすべてが、ナフサを原料にしたプラスチックでできている。容器が作れなくなれば、食品は作っても入れるものがない。

「石油化学のコメ」——ナフサは日常のあらゆる場所にある

石油化学の世界では、ナフサのことを「コメ」と呼ぶことがある。それほど多くの製品の出発点になっているからだ。

ナフサを高温分解すると、エチレン・プロピレン・ベンゼンなどの基礎化学品が生まれる。そこからポリエチレン・ポリプロピレン・ポリエステルといった素材が作られ、私たちの生活のあらゆる場所に入り込んでいる。

具体的に挙げてみると、こうなる。

  • 食品:プリンのカップ、ヨーグルト容器、惣菜トレー、冷凍食品の袋、ペットボトル
  • 日用品:シャンプーボトル、洗剤容器、ビニール袋、ラップフィルム
  • 衣料:ポリエステルの服、スポーツウェア
  • 医療:薬の包装、点滴パック
  • 建材:断熱材、配管パイプ、塗料の溶剤

ガソリンが上がれば「移動費が上がる」で済む。でもナフサが止まると、形のある製品すべての「入れ物」が影響を受ける。これが今回の問題の深刻さだ。

食品企業4割が「すでに打撃を受けている」

今日発表された業界調査が、危機の実態を数字で示した。

すでに4割の食品企業がナフサ不足の影響を受けており、プリンにとどまらず、菓子・乳製品・冷凍食品・惣菜と、幅広いジャンルで容器の調達難が起きている。

スーパーの棚が変わり始めるのは5月上旬が最初の波と見られている。ただし、これは「入荷量が少なくなる」ではなく、「販売そのものを休止する」という話だ。

食品メーカーにとって、容器がなければ商品は出荷できない。作れるのに売れない——そういう事態が現実になろうとしている。

ガソリン代だけじゃなかった——ナフサが止まると値上がりするもの

ホルムズ海峡封鎖の影響として、ガソリン代・電気代・ガス代の上昇はすでに報じられてきた。でも今回明らかになったのは、「第三の波」とも言うべき経路だ。

ナフサ不足→プラスチック原料の価格上昇→容器・包装材の値上がり→食品・日用品の価格転嫁

食品メーカーはすでに原材料費・物流費の高騰で値上げを続けてきた。そこに今度は「容器そのもの」のコスト増が加わる。消費者にとっては、同じ商品が袋やカップの分だけさらに高くなるという話だ。

政府は「備蓄4カ月分」と言うが、実態は違う

政府はこの問題に対して「ナフサの国内需要は4カ月分確保している」と発表している。首相もSNSに投稿し、「安心してほしい」というメッセージを出した。

ただ、この「4カ月」という数字には注釈が必要だ。

内訳を見ると、純粋なナフサの在庫は約20日〜2カ月分。残りの2カ月分は、すでにナフサから作られた中間製品(エチレン、ポリエチレンなど)の在庫を足したものだという。加工済みの中間製品は、そのままナフサの代わりには使えない。

専門家からは「このままでは6月に詰む」という言葉も出ている。政府の数字と現場の実感に、すでにズレが生じている。

いつから本格的に影響が出るのか

現時点での見通しはこうだ。

  • 5月上旬:プリンなど一部食品の販売休止が始まる可能性
  • 5月〜6月:食品容器・日用品包装の調達難が広がる
  • 夏以降:在庫が底をつく業種が出てくれば、第二波の値上げ・品薄へ

代替策として浮かぶのがバイオプラスチックだが、現状では国内生産量の約0.5%にすぎない。大量生産できる代替素材は存在せず、短期間での解決は現実的ではない。

「中東の話」が食卓の話になる日

ホルムズ海峡が封鎖されたとき、多くの人が最初に思い浮かべたのはガソリン代や電気代だった。

でも中東の石油が日本に届かなくなるとは、ガソリンスタンドの価格が上がるだけの話ではなかった。プリンのカップが作れなくなる。洗剤のボトルが調達できなくなる。シャンプーの容器が欠品する。

「形のある日用品すべて」に、石油は静かに入り込んでいた。

これまでの値上げは主に「原材料費」と「輸送費」だった。次に来るのは「容器代」という新しい波かもしれない。スーパーの棚が少しずつ変わっていくとき、その背景にあるのは遠い海峡の出来事だと、頭のどこかに置いておいてほしい。

一次情報・出典

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この記事を書いた人

時事・経済・社会問題を「身近な視点」から読み解くライター。日常のちょっとした引っかかりを起点に、政治・経済・テクノロジーの動きを平易な言葉で伝えることをテーマにしている。よりみち世相録では、3分で読めるニュース解説を毎週更新中。

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